睡眠中の体の向きは左側臥位(左を下)説、右側臥位(右を下)説とある。寝相は眠りやすさの反映だが健康面の良し悪しを考える

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睡眠中の体の向きは左側臥位(左を下)説、右側臥位(右を下)説とある。寝相は眠りやすさの反映だが健康面の良し悪しを考える

睡眠中の体の向きは左側臥位(左を下)説、右側臥位(右を下)説とある。寝相は眠りやすさの反映だが、それぞれ健康面でいいことや悪いことが取り沙汰されている。寝ているから本人は気づかないかもしれないが、スケプティクス(懐疑的)にまとめてみたい。

寝る時の体の向きが心臓に影響を与える

東北大学大学院保健学専攻の丸山良子教授らの報告によると、健康な若年成人を対象に検討したところ、睡眠時の体位が心拍数に影響することが分かったそうである。

他の体位に比べ、左側臥位で心拍数が減少したという。

そして、年齢が上がるにつれ、右側を下にした姿勢(右側臥位=がい)を好む割合が増え、慢性心不全患者では左側を下にした姿勢(左側臥位)を避ける傾向にある、と第37回日本睡眠学会定期学術集会(6月28~30日、横浜市)で報告された。

要するに、寝る時の体の向きが、心臓に影響を与えることが推認される報告である。

右を下にすることで、重い肝臓が下になり、心臓が上に位置することで、心臓に負担がかからなくなるのだろう。

しかし、それはあくまでも心臓と肝臓の話で、では胃や膵臓や脾臓や胆嚢など、同じように体の向きによって位置や負担が変わる臓器は、どちらの向きで寝たほうが良いのか。

というより、それらすべてを含めた全身の寝相として何が理想的なのかが知りたいところである。

通常、寝る時の体位は、仰向けか、うつ伏せか、半身になって左が下か、右が下か、とある。

意識不明で、人工呼吸器の力を借りていた人が覚醒した時は、最初は仰向けには寝せずに横向きに寝せる。

それによって、無気肺を避けるのだ。

では、無気肺の心配もいらず、心臓にも問題のない人ではどうか。

臓器の中で、とくに気になるのは、消化器系である。

なぜなら、食べ物が通るところであるからだ。

イメージ的には、胃が左から右に付いているのだから、食べ物が逆流しないようにするには右側臥位がよい、と考える。

しかし、左側臥位の方が落ち着いて寝られる場合もある。

では、いったいどちらがいいのか。

仰臥位(仰向け)、伏臥位(うつ伏せ)、左側臥位、右側臥位

寝方には、大きく分けて、仰臥位(仰向け)、伏臥位(うつ伏せ)、左側臥位、右側臥位とあるが、伏臥位(うつ伏せ)は、首を圧迫する恐れがあるため勧められないといわれる。

仰臥位(仰向け)は、オーソドックスな寝方であるが、上記のように、状態によっては無気肺のリスクがあり、またいびきを悪化させる可能性があると指摘もされている。

さて、当記事のテーマである、左側臥位、右側臥位の違いだが、一般に言われていることを簡単に列挙する。

右側臥位よりも左側臥位の方が、左心室の流入血流量が増えるため心臓に負担が増すから、心機能が低下しているなら右側臥位が良い。

四十肩、五十肩は寝相に起因するという説があるが、それに従えば、右側臥位は右腕が、左側臥位は左腕にリスクがある。

通常の胃の場合には、右側臥位(右側を下にする)の方が、十二指腸に消化物が通りやすいので逆流しにくく、膵臓酵素の分泌をうながす

左側臥位(左側を下にする)は、リンパから流れる汗や尿の老廃物排出がスムーズに行く

左側臥位(左側を下にする)は、膵臓に体液が流れ込みやすくなり膵臓酵素の分泌をうながす

などがよく言われていることだが、たしかに、胃の向きを考えて右側臥位(右側を下にする)で寝ても、朝起きると左側臥位(左側を下にする)になっていることがある。

つまり、体は左側臥位(左側を下にする)の方が落ち着くということがあるわけだ。

それでも、胃のために右側臥位(右側を下にする)に徹しようと思う……前に、こんな報告もある。

瀑状胃は左側臥位の方がいい

米臨床消化器病学会の報告では、左側臥位の方が、すなわち左を下にしたほうが、「慢性的な胸焼けを抑える」という説を唱えている。

これは、上記の説と正反対である。

右側臥位(右側を下にする)の方が、胃から腸への順当な流れを作れるのではないのか。

左側臥位(左側を下にする)にしてしまったら、胃液や消化物が、食道まで流れてしまう逆流性食道炎のリスクはないのだろうか。

ところが、米臨床消化器病学会によると、右向きに寝たら、胃と食道のつなぎ目にある下部食道括約筋が弛み、ベントの役割が機能せず、「胃酸が逆流を起こして食道を傷つけてしまう可能性がある」から「慢性的な胸焼けを抑える」ためにも左向きで寝る方がいいという。
http://tabi-labo.com/174214/sleeponyoreleftside/

どういう理屈かというと、左側臥位(左側を下にする)であれば、胃と食道の間の筋肉がしっかり栓をしてくれる。

しかし、右側臥位(右側を下にする)では、胃が腸の方に向くので、自律神経が油断して、胃と食道の間の筋肉が弛んでしまうというのだ。

ただ、たとえ緩んだとしても、胃液や消化物が腸に流れていけば無問題ではないかと思うのだが、どうやらこれは、胃の形状が「瀑状胃(ばくじょうい)」といわれるタイプのの場合に当てはまりそうなのだ。

瀑状胃というのは、カスケード・ストマックともいわれ、率直に述べると、胃の形がスムーズではない。

上部(胃底部)が背中側に折れ曲がった状態なのだ。

それによって、胃液や消化物が、胃袋に滝のように流れ落ちる。

生まれつき、又はリンゴ型の肥満タイプの人、神経質な人などに多く見られる。

Google検索画面より

Google検索画面より

瀑状胃なら、左側臥位(左側を下にする)でも胃液や消化物は逆流せず胃体部に溜まっている。

その溜まったものが、逆に右を下にすると逆流してしまう理屈になる。

もちろん、瀑状胃というのは一部の人であり、それ以外の「普通の胃」の人は、やはり左側臥位(左側を下にする)による胃液や消化物の逆流はあり得るのではないだろうか。

睡眠中の体の向きは左側臥位か右側臥位かのまとめ

いつもとは違う気になる寝方なら、もしかしたら、どこかの臓器が著しく調子が悪いのかもしれないので、それを判断するよすがとなるかもしれない。

ただいずれにしても、どの向きならなににいいかというのは、ひとつひとつの臓器についてあるのかもしれないが、健康な体なら、時々寝相を変えながら適正に調整するだろう。

その意味では、まず、体が求めている寝相が可能なふとんや場所などに気を使ったほうが良いかもしれない。

以上、睡眠中の体の向きは左側臥位(左を下)説、右側臥位(右を下)説とある。寝相は眠りやすさの反映だが健康面の良し悪しを考える、でした。

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この記事を書いた者
草野直樹(かやのなおき)

自己肯定感も、自己意思決定能力も低かったのですが、昨今流行の家系図作りをしているうち、高祖叔父と“日本のケインズ”の接点を発見。仙台藩で和喜次時代のお世話役で姻戚関係も!?。もう30年早く知りたかったなあという思いはありますが、せめてこれからは一国民、一有権者の立場から、ケインズ系経済学支持者としての発言を自分の意志で行っていきます。

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